Interview

SHOWAISM〜私のストーリー〜

年月を経て気づく昭和の魅力
―今に活きる短大時代

森永乳業株式会社
コーポレート本部 総務部
リーダー
久保雅代
昭和女子大学短期大学部 食物学科 1987年卒業

株式会社Z会ソリューションズ
コンテンツ営業課 販売管理担当
主任
野村 みお
昭和女子大学短期大学部 食物学科 1987年卒業
昭和女子大学短期大学部専攻科 食物科学専攻 1988年卒業

短大時代の友人とは30年以上経った今も仲良くしています

久保さん:一般的に大学や短期大学といえば、自由に授業科目を選択できるイメージでしたが、私たちが通っていた昭和女子大学短期大学部食物学科は、クラス単位で行動することが多かったんです。 野村さん:栄養士の資格を取得するための学科ですから、必修科目が多く月曜日から土曜日まで、ほとんどすべての時間割が決まっていて…。全員で教室から次の授業の教室へ移動していく、中学や高校時代と変わりないスタイルでしたね。きっと今も、栄養士や管理栄養士の資格を取得したい学生さんたちは、同じようなスタイルなのかしら。

久保さん:一日中、ずっと一緒に居ました。各教室、席まで決まっていたんです。

野村さん:すべての授業で出欠確認を取っていて、人数も少ないので、誰かが代わりに返事をしてあげることもできない。先生も一目で、空席が分かるわけですから。

久保さん:高校生のときにあこがれていたような、自由度の高いキャンパスライフは皆無でした(笑)驚くほど管理されていました。でも、同じ時間を過ごしたからこそクラスメイトとの思い出がたくさんあります。短大1年生のときに神奈川県足柄郡にある「東明学林」へみんなで学寮研修*に行ったのは特に印象的でした。「絶対に約束の時間に遅刻してはいけない」というルールだったので、私は5分前行動でなく、10分前行動を心がけていました。学寮があったおかげでクラスメイトとの結束力が強くなったと思います。時間管理が徹底される環境だったせいか、今でも10人ほどの仲のいい友人と会うと、自然とみんな集合時間より早く集まってしまうほどです。

野村さん:東明学林では食品加工実習としてミカンジュースを作ったりもしました。また、私たちが短大2年生のとき、千葉県館山市に研修施設「望秀海浜学寮」が完成して。栄養士コースの学生は、全員“マイ包丁”持参で、学寮に参加。待ち合わせ場所に集合して、バスで出かけた記憶があります。房州の海で地元の漁師さんたちと地引網をしてその場で調理して、みんなでお互いの出来栄えを確認し合ったのもいい思い出です。

久保さん:そして覚えているのは必修科目だった「実践倫理」の授業。当時は毎週土曜日でした。

野村さん:その授業には苦い思い出があるのよ(苦笑)。当時学長の人見楠郎先生が担当の授業は、学内のグリーンホールで行われていて、欠席や遅刻はもってのほか。土曜日の朝から、遅刻できない授業が組み込まれていて、毎週ドキドキしていました。

久保さん:懐かしい!遅刻すると、入口にカギがかかって入れないので、みんな頑張って行くしかなかったんです。

野村さん:実践倫理の課題として、学校内を細かく回って、学内のどの場所にどんな花が植えられているか調べて、“花地図”を提出した記憶があります。花にはそれぞれネームプレートもついているので間違えようがない。それを作っているとき、学内でたまに見かける“七人の小人の置物”の場所が日々変わっていることに気づいて、友人と驚いたこともいい思い出です。

久保さん:自分たちの大学を隅々まで知ろうということだったのかしら。今考えれば貴重な授業だったけれど、18歳、19歳の女子学生には理解しがたい内容も多かったです。かけがえのない時間をいただいていたと、今ではもったいないと思うことも多いけれど…。みんなで会ったときにこんな話で盛り上がっています。

*学寮研修とは

本学では創立以来、学生寮と研修学寮での生活を総合して全寮制と呼び人間形成の場として位置づけてきました。学寮研修は、教員と学生全員が1年に1度、学科単位で3泊4日の宿泊研修を行う本学独自のプログラムです。富士山を望む神奈川県の東明学林、もしくは千葉県房総半島の望秀海浜学寮で、フィールドワークやグループワークを通じて、学生同士の友情を深め、自主性・協調性を養います。

CHECK! 「リーダーシップを鍛える「プロジェクト型学寮研修」」(授業・学生の活躍 2019年7月4日)

CHECK! 「昭和女子大学の学寮研修って何? 〜管理栄養学科編〜」(昭和学報 2019年12月9日)

栄養士の資格を取得するために入学したものの就職先は一般企業へ

久保さん:私たちが高校生の頃は、短期大学のほうが4年制大学よりも就職に有利、という時代でした。また、高校の先輩が多く昭和女子大学に進学していたこともあり、昭和女子大学を志望。食べることが好きだったので“家政学よりも食物学”に行きたいと思っていました。さらに、卒業と同時に、栄養士の資格が取得できるというのも大きな理由でした。

野村さん:すごい大変でしたが(笑)私も動機は似ています。手に職をつけたいと思っていた、高校の調理実習の授業が好きだったという理由で、食物学科を志願したと記憶しています。高校の先生も、「設備も整っていていい学校よ」と言っていたことも理由でした。

久保さん:あんなにみっちりカリキュラムが組み込まれているなんて。臭いの成分を調べたり、ラットの解剖をしたり…。今思うと実習も楽しかったですね。でも、友達の中に「栄養士」として就職した人はあまり多くなかったように思います。

野村さん:資格は取得すれば、いつでも使えますし、だったら新卒採用は一般企業を受けてみようと考えた人が多かったのかもしれません。久保さんのように、食品会社に行く人は多かったですけどね。

久保さん:たしかに。私は大学から求人を紹介してもらい、森永乳業株式会社に入社しました。ただ、一般職での採用だったので、商品のパッケージ管理や宣伝関係の業務や支店の内勤業務や労務管理など、栄養士とはあまり関係のない部署で働いていますね。

野村さん:英文学科卒でも英語に関係のない仕事をしている人がいるのと同じ感覚かもしれません。何を学んできて何を生かすのかは人それぞれ。私は短大を卒業した後、1年専攻科に残りました。入学前、大学はもっと自由に興味のある科目の履修ができると思っていたのですが、短大時代だけでは難しかったというのが理由です。なので、専攻科時代にはとにかくいろいろなジャンルの授業を選択して、自分の興味の幅を探りながら広げていました。そのなかで教育や出版に興味を持ち、「増進会出版社(現在の株式会社Z会)」を志望したんです。

久保さん:私はやっぱり食べ物が好きだという気持ちも大きかったのかな。栄養士として働くのはたいへんそうだけれど、やっぱり食品に携われる仕事がしたい、と思ったの。

野村さん:栄養士の資格を取得したことは、日々の暮らしに役立っているしね。テレビの健康番組で栄養学の話をしていたり、料理番組を見ていても、きちんと理解できるのも、学生時代の学びが役立っているのだと思います。

「文化研究講座」や「女性教養講座」での体験が今に繋がっています

野村さん:きっと今、人見楠郎先生のお話を聞いたら、10代のときよりも心に沁みるんだろうな、と思うことがあります。そして、昭和女子大学特有の授業といえば、学内の人見記念講堂で行われる「文化研究講座」「女性教養講座」。安価で観ることができたので、毎回リストが届くのを楽しみにしていました。あるとき、文化研究講座で「京劇」を観る機会があって、そしたらなんと、隣の席にいらしたのが黒柳徹子さんだったんです!黒柳さんが幕間に「京劇が好きなの?」と話しかけてくださり、「大学が用意してくれたチケットで、初めて京劇を見ました。とても面白いですね」と他愛もない会話をしたのよ。黒柳さんから「学生さんでこんな機会を得られるのは素敵なこと」とおっしゃっていて。あの時の会話は、今でも強く印象に残っています。

久保さん:観劇したらレポートにまとめて提出する。1年に何回と最低回数が決まっていて、クリアしないと単位がもらえなかったんです。「公演につきクラスで何枚」と割り当てが決まっているので、みんなで公平に分けなくちゃいけなかった。もちろん全員が観に行く、必須の公演もあって。私はクラス委員としてチケットを配る係で、公平に配るのがたいへんだった記憶があります。今なら、SNSで簡単に確認できるんだろうなと思います(笑)。

野村さん:今にして思えば、学生では手が出ないような一流の芸術を見る機会を与えていただけたことに感謝しています。私たちに、たくさんの学びの種を植えてくださっていたのだなぁと。観劇マナーも「文化研究講座」を通して身についたと思います。社会に出てから役に立つ“きっかけ”をたくさん与えていただきました。それこそ、シャワーのように。きっと学生のうちはそのことのすばらしさになかなか気づかないかもしれません。今でなくても、のちの人生が豊かになると思います。ちなみに、30歳からフラメンコを習っているのですが、きっかけは「文化研究講座」で見た「アントニオ・ガデス舞踊団」のフラメンコでした。何度もスペインを訪れるなど、人生を楽しむきっかけをいただけたと思います。

久保さん:学生時代は“やらされている”という感覚が強かったと、今になって後悔しています。若さゆえなので、これは仕方がないのかもしれません。むしろ、「考えるより、まずやらなくては」と思っていたほどで、時間的余裕もなく追い立てられるように勉強していました。でも、“あのときたくさん勉強したから、仕事で大変なことがあっても乗り越えられる”というような、自信につながったと思います。在学中には気づかないことかもしれませんが、今後の人生の糧となるよう、頑張って勉強してもらいたいですね。

野村さん:きっとそのときには気づかないことは多いと思います。在学中の反省を踏まえると、惰性で学ぶことはもったいない。皆さんには、「今していることは何のためにやっているのか」をつねに考え、選択し、行動してほしいなと思います。仕事も同じで、これを意識して行わないと、ただ“こなす”こととなり、正しい結果につながらないことが多いです。「何のために学ぶのか」を考え、意識して行動につなげると、大学で身につく内容や結果が何倍にもなると思いますよ。

久保 雅代さん

(くぼ・まさよ)

森永乳業株式会社
コーポレート本部 総務部
リーダー

1987年 昭和女子大学短期大学部 食物学科 卒業

野村 みおさん

(のむら・みお)

株式会社Z会ソリューションズ
コンテンツ営業課 販売管理担当
主任

1987年 昭和女子大学短期大学部 食物学科 卒業

1988年 昭和女子大学短期大学部専攻科 食物科学専攻 卒業

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